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遺贈と死因贈与

遺言のところで解説すればよかったのですが、ここで遺贈と死因贈与について解説しておきます。

遺贈(いぞう)とは、遺言によって無償または負担付きで財産的利益を他人に与えることをいいます。

遺贈は、無償であることから贈与にも似ています。

ただ、贈与というのは「あげるよ。もらうよ」と両者の意思が合致(契約を締結)しなければならないので、死因贈与(しいんぞうよ)の場合も、生前に「死んだらあげるよ。もらうよ」と契約が締結されなければなりません。

一方、遺贈は「遺贈する」という遺贈する側の意思だけで成立しますので、生前に、もらう側が何かしなければならないということは一切ありません。

まず、そこが違いです。

違いをいちいち挙げてもいいのですが、わかりにくくなりそうなので、まず遺贈についてざーっと解説します。


遺贈は、遺言書によってのみできます。

遺贈で財産をあげる相手は、相続人でも相続人以外の第三者でもかまいません。

遺贈は遺留分の規定に違反することができないということになっていますが、仮に遺留分を侵害しても遺贈が無効と言うわけではなく、遺留分減殺請求の対象となるにすぎません。

遺贈の方法ですが、遺贈する際に、「あの不動産を遺贈する」と具体的に指定する場合もあれば、「相続分の2分の1を遺贈する」などと法的な地位を遺贈する場合もあります。

前者を特定遺贈といいます。

後者を包括遺贈といいます。

この違いは、遺贈の対象となる財産の違いにとどまらず、法的な位置づけが異なります。

具体的に言うと、包括遺贈では、相続人と同じように、被相続人の資産・負債(権利・義務)をその遺贈された割合に応じて承継することになります。

なので、ここまでの解説の中で相続人に当てはまることは、基本的に、包括遺贈を受けた受遺者にもあてはまることになります。

負債も承継しますので、包括遺贈を受けるというのは、とても重大なことなのです。

遺贈は、先ほど解説したとおり、遺贈する人だけで行う単独行為で、相続が開始した時(遺贈した人が亡くなった時)に法律上の効力が発生しています。

相続で、当然に権利義務が承継されるがごとく、です。

ですが、遺贈される側も、それはいらない、ということだってあるわけですから、法律でそれが規定されています。

(遺贈の放棄) 第九百八十六条

  受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。

2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告) 第九百八十七条

  遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。

特定遺贈の一部の財産についてのみの放棄というのも可能とされています。

放棄するという場合は、遺贈義務者(相続人または遺言執行者)に対して、放棄すると意思表示すれば足ります。

ただ、上の条文が通用するのは特定遺贈の場合だけです。

東京地裁昭和55年12月23日
遺贈は包括遺贈であるところ、包括受遺者は相続人と同一の権利義務をもつ(民法九九○条)ことからその放棄には相続人の放棄に関する規定が適用され、民決九八六条の規定は包括遺贈については適用はないものと解されるから、自己のために包括遺贈があったことを知った時から三カ月以内に家庭裁判所に放棄の申述をしなければ単純承認したものとみなされることになり

包括遺贈の場合は相続人と同じように扱われますので、包括遺贈をしない場合は相続人と同じように相続放棄をしなければなりません。

熟慮期間などの制限も相続人と同じですので、自分が包括受遺者となったことを知った場合はすみやかに遺贈を受けるかどうかの判断をしたいところです。

そのように包括受遺者は相続人と同じように扱われますが、次の点は異なりますので注意が必要です。

 ①遺留分は有しない
 ②代襲相続は起きない(代わりの規定があります)
 ③共同相続人に相続放棄があったりしても包括受遺者の持分は増えない
 ④包括受遺者の持分は登記しないと第三者に対抗できない
 ⑤法人も包括受遺者になることができる
 ⑥遺贈による登記は受遺者と遺言執行者または他の相続人との共同申請になる
等々です。

遺言の内容が、特定遺贈なのか、包括遺贈なのか、実は書き方によって微妙なケースがあるのですが、詳しくは解説しません。


次に、死因贈与です。

死因贈与は契約ですから、本来は、贈与する人も贈与される人も拘束されます。

しかし、民法は死因贈与契約が遺贈と同様の役割を果たすことから、遺贈の規定を適用することにしています。

そのため、書面でした死因贈与も取り消すことができるなど、通常の贈与契約と異なる一面もあります(通常の贈与を解説していないので、申し訳ないのですが)。

では、死因贈与と遺贈の共通点・違いを列挙してみましょう。

遺贈

死因贈与

単独行為

契約

満15歳で可能

満20歳で可能

遺言者の死亡により効力発生

贈与者の死亡により効力発生

いつでも撤回できる

いつでも取り消しできる。ただし、負担付き死因贈与の場合には、生前に負担の全部またはそれに類する行為をしていたときは、特段の事情がなければ取り消しできない。

遺留分減殺請求の対象となる

遺留分減殺請求の対象となる

代理人ではできない

代理人でも可能

負担付き遺贈も可能

負担付死因贈与も可能

遺言書でする

口頭・書面でも可能

こんなところでしょうか。


死因贈与を使うメリットは、遺言書のように形式にとらわれずに利用できる点と、負担付き死因贈与にしてちゃんと負担を果たしておけば、将来、取り消される心配がない点です。

なにしろ、遺言書に書いてもらっていても、いつ新しい遺言書ができて前の遺言書が撤回されるかもわからないのですから。

なお、死因贈与にも相続税がかかることは遺贈と同じです。

遺贈と死因贈与の違い、イメージつきましたか?