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相続のイロハ

制度の詳しい説明はこれからゆっくりとすることにして、ここでは一般の方と専門家との間で、相続についての理解が違うかもしれない、という点をいくつかご紹介しましょう。

一つ目。

一般に、「相続した」とか「相続する」などと言いますが、相続は「するもの」ではありません。

何を言っているんだ、とお思いかもしれませんが、相続は、ご本人が亡くなったその時に「開始」して、相続人が「当然に」権利義務を引き継ぐので、相続人のアクションを必要とするものではありません。

つまり、死亡により「相続」が「開始」し、「相続開始」により権利義務が引き継がれます。自動的に。

同じことを繰り返して言っているだけですが、まぁ、そういうことです。

たとえば、よく「うちはまだ相続が終わってなくてねぇ」という言い方を耳にしますが、これは言い方としては正確ではありません。

法律的にいうと、ご本人が亡くなった時点で相続はしている(開始している)のです。

おそらく一般の方がこういう言い方をするときは、まだ遺産分割協議が済んでいないとか、不動産の登記名義がそのまま、という場合なのでしょうね。

それなので、仮に、相続が開始したけども何もいらないわ、という相続人がいたとして、その相続人が「相続しようかしら?」と考えているというのも正しくありません。

なにしろ、相続はすでにしているので、考えるとすれば「相続を放棄しようかしら?」もしくは「遺産分割協議のときに何も貰わないことにしようかしら?」と考えるのが正解です。

言葉の問題じゃないか!と思われるでしょうが、そういう意識を持つことが重要な場面があります。

相続放棄です。

たとえば、時より「父親の借金が見つかったんだけども、相続のときに何も貰ってないから、相続してませんよね?」というご相談があります。

残念ですが、相続放棄をしていない以上、相続をしています。

また、遺産分割協議に参加して相続を承認している場合には、よほどの場合でなければあとから相続放棄はできません。

相続は、するまでもなく生じている、ということなのです。

二つ目。

相続人はすべての権利義務を承継(引き継ぐ)わけではありませんが、ほとんどの権利義務は承継します。

これはまぁ、皆さんもご存知ですよね。

特に保証人としての義務など、亡くなった本人もすっかり忘れていたものでも「相続」してしまいます。

相談者 「うちの父には、何もないから・・何もしなくてもいいんですよね」

弁護士 「何もなくても世話好きだったりしませんでしたか?」

相談者 「そういう面はありました。人が良く、頼りにされていました。」

弁護士 「良い方だったのですね。お父様もご家族に負担だけを相続させることは望まないでしょう。保証人などになっていた可能性があるなら、万一に備えて、相続放棄を考えても良いかもしれません。」

何もない人で借金や保証人の可能性があるなら、放棄しておいて損はない、ということですね。

三つ目。

生前にできることがたくさんあるということです。

遺言も最近では盛んになってきましたが、亡くなった後のことを決めておく方法は、なにも遺言だけではありません。

たとえば、死因贈与契約などは、遺言よりも強力な使い方もできます。また、裁判所の許可を得て、生前に遺留分の放棄をすることも可能です。

最近では、遺留分の特例などもできましたし、遺言書と任意後見契約、信託などを組み合わせて、老後とさらにその先まで自ら備えておくということも可能になってきています。

こうした生前にとれる手段を活用して、相続人の方への負担を減らしたり、自分の遺志を実現することができるのです。

四つ目。

法律上の死亡は、人の死だけでなく、失踪宣告や認定死亡などの制度によっても認められ、相続が開始します。

失踪宣告は民法、認定死亡は戸籍法に定められていて、実際に亡くなっていたり、亡くなったことが確認できなくても、法律上の死亡と扱って相続が開始することがあるのです。


へぇ、と思うこともありましたか?

まだ抽象的な話なのでピンと来ないかもしれませんが、あとでしっかり説明しますのでついてきて下さいね。

だんだん法律の世界に入ってきた気がしてきましたか?

イロハだけでもう面倒だ!なんて言わないで、さて、これから相続の詳しい中身を見ていきましょう。