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借金だけ相続したくない?

さて、ここまで「誰が」(相続人) 「どのくらい」(相続分)相続するかを見てきました。

ここでは「何を」相続するのか、いわゆる相続財産の範囲というテーマを見て行きましょう。

さっそく民法を読んでみましょう。

民法にはこう書いてあります。

(相続の一般的効力) 第八百九十六条

  相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

一切の権利義務とありますね。

原則は、被相続人(亡くなった方)の権利義務を全て相続する、というものです。

権利も義務も、全部。

ん?

「ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」とも書いてあります。

およびでない、ものもあるようですね。


遺産というとまず初めに思いつくのが、被相続人の財産、いわゆる所有物です。

民法では、物を所有する権利を所有権といいます。

相談者「そうそう不動産とか、預金とかでしょ」

弁護士「所有している不動産についてはもちろん所有権ですね。」

弁護士「ですが、預金は違います。」

相談者「預金も財産でしょう?」

弁護士「まぁ、そうあせってはいけません。」

不動産でもは借りている場合もありますよね。もしくは勝手に住んでるとか。

借りている権利は、賃借権。勝手に住んでいる場合は、占有権(占有の事実といったほうが良いかもしれません)があるかもしれません。

このように、権利というのは様々に分類されています。

ここが相続財産の範囲とその後の処理を考える上で、ややこしいところです。

普通ならここで民法の権利の体系の話をしなければなりませんが、かなり退屈なのでそれは飛ばして、相続では、所有権でも賃借権でも債権でも、すべて承継する(引き継ぐ)ということだけ、まず確認してください。

ただし、資産であっても、祭祀承継(さいししょうけい)といって、先祖を弔っていく設備・責任といったものは、相続財産には含まれません。


次に、相続で引き継ぐものには、資産のほかに借金もありますよね。

この章のタイトルにもありますが、借金も相続財産の範囲に含まれます。

借金は負債(ふさい)とも言います。

また、借金も負債も、広い意味で債務(さいむ)と呼ばれます。

債務、という言葉はこれからも良く出てくるので覚えておいてください。

相続する以上、債務も引き継ぐ。

これが答えですが、この債務の中にもいろいろな種類のものがあるのです。

例えば、保証人が負う保証債務。

ほかにも、権利と義務が入り混じっていますが、不動産を貸していた場合などの賃貸人の地位(貸す義務)も債務として引き継ぎます。

あと、忘れてはならないのが税金を払う義務ですね。

なお、分けることのできる債務は法定相続分に従って、分かれて引き継ぎます。

債務を引き継ぐ割合は、遺留分とか特別受益とか、おかまいなしです。

相続分の譲渡をしてもだめ

債務から完全に逃れるには、相続をしなかったことにする、つまり相続放棄をするほかありません。

一方、債務の中には、労働する約束とか、舞台出演を承諾した、とか、その人でなければ実現しようもないようなものもあります。

また、養育費を送る義務なんてのは、その人が亡くなれば終りです。その人固有の義務ですから。

そういったものが、冒頭にでてきた「ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」に該当するもので、これらは相続されません。

また、法律の中に、死亡することが契約の終了事由に定められているものもあり、そうしたものは相続の対象になりえません。

依頼者から依頼を受けている弁護士(個人)の義務なんてのも、その弁護士が亡くなれば、義務を果たしてもらうことは不可能ですよね。

さらに、債務の相続という点で、理論上問題になるのは、身元保証人の責任は相続されるのか、根保証はどうか、という点がありますが、ここでは省略します。

身元保証に関しては、もし不安のある方はご相談にいらしてください。 保証の義務を制限する判例なども出ていますので、安心できるかもしれません。


だらだらと解説してしまいましたが、ここまではイントロということで、次の章から、個々の解説をしていきます。

まずは、もらってうれしい資産のお話から始めていきましょう。