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相続人じゃないと退去?

さて、ここでは、資産をどう引き継ぐかというお話です。

資産と一口に言っても色々な種類があります。

例えば、 不動産や車などの、物を所有しているぞー、という所有権。

他にも、 あいつにお金を貸している、という貸し金債権(債権)。

銀行にお金を預けているので返してもらえる、という預金債権(債権)。

また、 借主としての地位(賃借権)、株主としての地位(株式)、会員としての地位(会員権)、けっこう問題になるのが、退職金請求権(債権)・保険金請求権(債権)

などなど。

めずらしいのは、 売買契約の後で買主が死亡した場合の商品の引渡し請求権(債権)や、滞納されていた未払いの養育費請求権(債権)などでしょうか。


ではまず、ここでは例として賃借権の相続について解説してみましょう。

賃借権とは、対価として賃料を払うことで、他人の物や不動産を使うことができる権利です。

この賃借権は、相続されると考えられています。ただし、公営住宅は特殊なので要注意。

賃借権が相続される?当たり前でしょ!

と、思われるでしょうが、実際には賃借権が相続されるというのは、いろいろと問題もあるのです。

例えば、年老いた父親が内縁関係の女性と借家で同居を始めたところ、別のところで暮らしている子供らとは疎遠になった、というような場合。

結婚していなければいわゆる内縁の妻ですので、相続する権利はありません。

すると、相続人である子供らは、父親の死亡とともに、賃借権を相続した、といって内縁の妻を追い出そう、なんてこともあるわけです。

内縁の妻の側からすれば、愛する男性の面倒を最後まで見たにもかかわらず、相続する権利もなく、住んでいた家まで追い出されるのでは、たまったものではありません。

男の側は、遺言書を書いてあげるべきでしたが、亡くなってからではどうしようもありません。

相続というのは、親族関係をベースに形式的に行われますので、賃借権などの実際上の生活がかかわる場面では割り切れないことも起こるのです。

裁判所は、そういうケースで内縁の妻を救済するために、それぞれ、大家さんからの退去要求には相続人の賃借権を援用することで住めるようにし、相続人からの退去要求は権利の濫用として退けてあげて、そのまま住めるようにしてあげたケースがあります。

最判昭和37年12月25日(家主からの明渡請求)
被上告人はA女を中心とする家族共同体の一員として、上告人に対しA女の賃借権を援用し本件家屋に居住する権利を対抗しえたのであり、この法律関係は、A女が死亡し同人の相続人等が本件家屋の賃借権を承継した以後においても変りがないというべき

最判昭和39年10月13日(相続人からの明渡請求)
上告人および被上告人間の身分関係、本件建物をめぐる右両者間の紛争のいきさつ、右両者の本件建物の各使用状況およびこれに対する各必要度等の事情につき、原審がその挙示の証拠により確定した事実関係に照らせば、被上告人に対する上告人の本件建物明渡請求が権利の濫用として許されない旨の原審の判断は、正当として肯認するに足りる。

ただ、賃貸借契約上の家賃を支払う義務については、そのままにしておくと法律上は相続人が負っていることになるので、そういった不安定な状況のままにしておくのは好ましくありません。

そのため、家主・内縁の妻・相続人で、裁判所の救済ケースなどを頭に入れながら交渉をして契約を結びなおすというのが良いでしょう。

なお、タダで借りてた、という使用貸借(しようたいしゃく)の権利は、借主の死亡で終了しますので相続されません。

祖父母の土地の上にタダで建物を建てさせてもらってるなんてのはありませんか?

要注意ですよ。