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相続財産を管理する?

相続が開始してから遺産分割協議が決まるまでの間の相続財産の管理については、分割前はどうなってる?のところで書いた理屈に従って管理の手法が決まっていきます。

ここで理屈を繰り返してもなんなので、具体例に沿って問題になりがちなところを解説していきましょう。

不動産については後でまとめて取り上げることにして、
 ①自動車などの動産の管理
 ②貸しているお金の返済の受け取り
 ③借りているお金の返済
 ④貸し金庫を開ける
 ⑤遺産分割協議が決まるまでの相続財産の管理費用
あたりを解説することにします。

なお、分割前はどうなってる?で書いたように、物は共有、債権債務は分けられるものは分かれて相続されています。

なので、遺産分割協議の対象にならない可分債権・債務は、相続が開始した時点で各相続人の債権・債務になっていますから、本来、相続財産としての管理の対象にすらなりません。

ただ、銀行預金のように本来は可分債権でも、判例や実務上、遺産分割協議なかで話し合うケースがほとんどなので、相続から遺産分割協議までの間をどうするかという問題は生じてきます。


まず、共有状態の物の管理(①)は、民法の共有の規定がありましたね。

復習してみましょう。

①共有している人は、その物の全体を、共有の持分に応じて使用してよい。

→テレビを一人で見ても良い。ただ、他の相続人が、私にも相続分だけ使わせて、と言ってきた場合には、全体を相続分だけ使わせてあげなければなりません。

②共有している人は、他の人に勝手に、物を処分してはいけない。

→テレビを勝手に捨てちゃダメ。改造してラジオにしちゃうのもダメです。

③共有している人は、あわせて過半数の持分をもつ者が同意すれば、管理に関することはできる。

→人に貸すとか、デジタル放送も受信できるように部品を付けるとかは、過半数の人がいいっていうならOK。

④共有している人は、保存に関することは、一人でもできる。

→テレビが故障したので修理する、誰か勝手に持って行っちゃったので取り返すなど、は一人でもOK。

覚えてましたか?

不動産・動産は、共有一般の考え方で管理すればOKです。


さて、債権・債務はどうでしょう?

債権や債務の中でも、相続人の相続分に従って分けられない不可分債権・不可分債務は、その債権の管理に関しては、上の共有の規定を参考にして良いでしょう(ほんとは良くないのですが・・)。

問題は、分けられる債権・分けられる債務についてです。

遺産分割の必要がない?のところで書いたように、分割債権・分割債務は、相続によって、その時点で、相続分に応じて各相続人の債権・債務となっています。

貸金の請求と返済を例に見てみましょう(②③)。

例えば、Aさんが、Xさんに100万円を貸したまま亡くなりました。
相続した兄弟BCは、Xさんに対する貸し金債権を50万円ずつ相続しました。
貸し金債権は、可分債権ですから、遺産分割協議を待たなくても、BがXさんに50万円、CがXさんに50万円をそれぞれ請求できます。
ある日、Aさんが亡くなったことを知らないXさんのところに、Bさんが訪れて、相続したから50万円を支払え、と言ってきました。
Xさんの本来の支払期限はとうに過ぎています。

Xさんは、どうしたらよいか悩み、弁護士に相談に行きました。

弁護士 「そうですか。それは驚きましたね」

Xさん 「払わなければなりませんか?」

弁護士 「まぁ、そうあせらずに」

弁護士 「まず、Aさんが亡くなったというのは事実ですか?」

Xさん 「あとから告別式に出た友達に聞きました」

弁護士 「まぁ、それなら事実でしょうが、相続人を確定するのも含めて、BさんにAさんの戸籍や相続人の関係を示す戸籍一式を見せるように頼んだらどうですか」

Xさん 「その確認は必要ですね。でも、あいつは怒りそうだな」

弁護士 「ですが、ほかにたくさん相続人がいたとするとBさんの相続分は2分の1ではないかも知れませんよ」

Xさん 「そうですね。それが確認できれば支払わなければなりませんか」

弁護士 「ですね。しかたありません」

Xさん 「もし、あとであの兄弟のうちCが来て、遺産分割協議で私への貸し金を全部相続した、なんて言ってきた場合はどうなるのでしょう」

弁護士 「もし返済した内容と異なる遺産分割協議があったような場合でも、Xさんが相続のことなどをきちんと注意してBさんへの返済した場合には、難しい言葉ですが、債権の準占有者への弁済という制度で、保護されていますので大丈夫です」

弁護士 「ただ、争いに巻き込まれる恐れもあるので、不安があれば供託するというのも一つの手です」

Xさん 「では、供託の手続きをお願いできますか」

弁護士 「わかりました」

というわけです。

個人間の貸し借りとなると、金融機関のように「全員のハンコを持ってこい!」とふんぞり返っているわけにもいきません。

もし払わないでいれば、裁判を起こされて一括弁済を求められかねませんので、やはり対応が必要です。

権利が確認できたら支払う、権利に確信が持てないので供託する、など状況に応じて対応が異なりますので、ご相談にいらしてください。


貸し金庫を開ける(④)

貸し金庫は、その名の通り金庫を貸す、借りる、という契約なので賃貸借契約です。

そうすると、これまでの理屈でいけば、過半数の管理行為で開けたり解約したりできそうです。

ですが、そこはやっぱり銀行。

相続人全員の同意がないと開けてくれません。

ただ、銀行も相続人全員の同意がないと開けないとばかり突っ張っていては、あかずの貸し金庫ばかり増えてしまいます。

それなので、通常は、貸し金庫の契約をする際に、将来の相続人(推定相続人といいます)に貸し金庫契約の保証人になってもらって、その保証人は単独で開けることができるとしています。

保証人でも相続人でも、全員で開けるのでないときは、あとで争いにならないように、公証人に立ち会ってもらうという方法で貸し金庫の内容を証明してもらうこともできますので、心配な方はご活用を。


管理費用について(⑤)

遺産分割協議が決まるまでの相続財産の管理費用。これも共有のところの考え方が使われますので、管理費用については遺産の中から出すこととされています。

裁判例が認めた管理費としては、
 土地建物の固定資産税
 借地料
 電気料金
 水道料金
 火災保険料
 下水道使用料
などが、あるようです。

そのほかにも事情に応じて、雨漏りの修理費なども認められることもあるでしょう。

遺産分割協議の中でその管理費をどう支出するかは、相続人の間で合意ができれば、自由に決められます。

協議が決まらず、家庭裁判所の審判に遺産分割の結論がゆだねられる場合には、実務的には、それらの管理費を立て替えた人からの申し出があった場合に、その管理費を遺産分割協議の対象とすることの合意をして、審判の内容に反映させるということも行われます。


管理についてのまばらな解説はこれでおしまい。

不動産の管理については章を改めて解説することにしましょう。

なお、ここで説明したことは遺言執行者がいる場合には結論が異なってきますので、要注意です。