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遺産分割のその前に

ここまでで、「誰が」(相続人)、「どのくらい」(相続分)、「何を」(相続財産の範囲)、「どう」(もうすぐ遺産分割)、相続するかを見てきました。

ここまで整えば、さぁ、遺産分割協議です。

ですが、この「整えば」というのがくせ者です。

要は、遺産分割協議に入る前提問題が解決していないと、有効な遺産分割協議ができませんよ、ということです。

では、どういう点が整っていないといけないか、順々に、しかも一気に!見ていきましょう。


まず、「誰が」相続人か、という問題では、親族関係の有無が問題になります。

良くある例は、被相続人が亡くなる直前に養子縁組をしたという場合に、その縁組が有効か、無効か。

これは養子縁組の際に、被相続人の真意でなされたか、当時意思能力があったか、などが争点になって争われます。

これが有効か無効かで、法定相続分が大きく変わることもあるので、関係者にとっては重大です。

この争いは、遺産分割協議の中で話し合ってもよいのですが、話し合いがつかない場合には、養子縁組の効力が無効であることを確認する裁判を、遺産分割協議とは別にやらなければなりません。

別にやると言ってもその結論が出るまでは法定相続分が決まらないのですから、多くの場合は、遺産分割協議自体が保留になるでしょう。

養子縁組だけでなく、結婚や離婚の無効も同様です。

亡くなった方が遺言書で認知をしたような場合にも、認知が有効かどうかが「誰が」の問題として生じます。

認知は、親が亡くなった時でも子の側からすることができるので、亡くなって遺産分割協議が済んだ後に認知の請求がなされるなんてこともありますが。

死後に請求された認知でも認知が認められると、子は、生まれた時からその親の子であった、ということになるのでその親の相続人であったことになります。

そのため、本来はその子も相続人として遺産分割協議に加えなければならないのですが、いつなされるかわからない(死後3年以内という制限はるものの)死後認知を待っていても仕方がないので、遺産分割協議を進めてしまうのが通常です。

民法も、そういう場合には、遺産分割協議をやり直せとまでは言わず、相続分の価格評価に応じた金銭を払えばよいということにしてあります。

相続人の生死が不明であったり、連絡が取れない場合には、失踪宣告や不在者財産管理人の利用も、遺産分割協議の前に検討する必要があるかもしれません。

「誰が」のところでは、「欠格」や「廃除」なんていう制度もありました。

欠格かどうかは、特別な手続きがないので、「あいつは欠格にあたる!自分は欠格にあたらない!」との争いがあると、遺産分割協議の前に、欠格自由が該当するかどうかの確認の裁判が必要になる場合もあるでしょう。

廃除は生前にも遺言でもできましたが、家庭裁判所の判断が必要なので、それも遺産分割協議の前に済ませておきたいところです。

ほかにも、まだ解説していませんが、相続放棄がなされたかどうか、有効か無効かも争いがあるようであれば、「誰が」のところで遺産分割協議の前に確認しておきたいことの一つです。

「誰が」(相続人)だけでも、こんなにありました。

次に「どのくらい」(相続分)ではどうでしょう。

ここは前提問題というよりも、遺産分割協議の本丸ですね。

法定相続分は法律で決まりますし、特別受益や寄与分は、遺産分割協議の中での主戦場です。

むしろ「どのくらい」(相続分)を争うがゆえに「誰が」(相続人)の問題が生じるというのが一般的でしょう。

相続分の譲渡・放棄がなされた場合も、同様に、誰が・どのくらいに影響を及ぼしますので、遺産分割協議の前に確定させます。

争いが多いのは「何を」(相続財産の範囲)です。

父が寝たきりになった後で、父の預金が姉の口座に移っている、というような場合には、贈与したのであれば特別受益の問題になりますが、姉が「これは元々、私の預金よ!」と主張した場合、相続財産かどうかの争いになります。

この争いも、遺産分割協議の中で話し合うこともできますが、解決しない場合は、遺産分割協議とは別に、相続財産であることを確認する裁判で決着をつけなければなりません。

この裁判は、全員参加で行われます(固有必要的共同訴訟)。

なお、反対に、亡くなった父の名義の不動産だけど、私のもので相続財産じゃないわ、というような場合も話し合いで解決しない場合には、固有の財産であることを確認する(所有権確認の)裁判で決着をつけるほかないでしょう。

ただ、家庭裁判所の審判でまったく判断できないかというとそうでもなく、家庭裁判所も一応、相続財産の範囲を判断できるということになっていますが、最終解決はしないとされています。

「何を」の争いで良くあるのは、預金のほか、株式、不動産など、名義がわかるものです。

先ほど預金を例にあげましたが、預金の場合は、株式や不動産などのように特別な名義変更の手続きがなされないことが多いので、もらったのよという特別受益の主張もありうるところです。

どちらの主張がなされるかは、経緯にもよるでしょうが、特別受益のところで解説したように、特別受益はもらいすぎていても払い戻すまでは義務付けられていないので、ほかにあまり財産がない場合には「もらったのよ」(特別受益)と主張し、ほかにも財産がある場合には「これは元々、私の預金よ」と主張した方が得ということになります。

「何を」のところでは、このように相続人間で争っているケースばかりでなく、亡くなった被相続人がしていた裁判が進行中であったりして、権利がまだ確定していないというようなものもあるでしょう。

損害賠償請求権や保険金が、相続人の相続財産となる場合にも、この「何を」のところの前提問題として、遺産分割協議までに解決しておきたいところです。

「どう」相続するかのところでは、遺産分割協議の前に、相続人が相続財産を処分してしまったような場合に、遺産分割協議の前に確定すべきことが生じます。

物(動産・不動産)について、共有状態であること。 共有の持ち分を処分することもできることなどから、そうした処分がなされた場合に「誰が」「何を」相続しているのかを確認する必要があります。

また、債権については、分割債権を分割して相続しています。

この場合は、必ずしも遺産分割協議を要しません。

分割債権も遺産分割協議の中で協議するかどうか、は合意で決まります。

さらには、相続開始後に発生した賃借料の負担や収受についても、法的には遺産分割協議を待たなくてもそれぞれに帰属していると言ってよいでしょうが、遺産分割協議の中で誰がどう負担・収受するかを決める場合もあるでしょう。

最後に、まだ解説してしていませんが、遺言書のことを解決しておかなければなりません。

遺言書は、有効か無効か遺贈されて、遺産分割協議に加えなければならない人はいるか

などなど、遺言書の検討事項は多岐にわたります。

これは遺言のところで解説します。


以上!

これで、ようやく遺産分割協議に突入です。

すでに疲れた、なんて言わないでくださいね。