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分割の方法・基準

まず、方法について。

遺産分割は自由だ!で書いたとおり、自由に決めてもらって結構です。

ただし、自由と言っても「全員」で話し合って納得した結果でなければいけません。

誰かが参加していないとか、騙されたとか、押印するように強迫されたなんてことがあると、無効だったり、あとで取り消されたりします。

なので、全員でひざ詰めで話し合う、ということが第一です。

また、一度に集まらなくても、誰かが遺産分割協議書にハンコをもらって歩いても結構です。

誰々がどれを取るとか、これを取るかわりにもらいすぎなので現金を払うよ、とかいうのもOKです。

もちろん、もらわないというのも自由ですし、そもそも関わりたくなければ相続放棄をしてしまえば遺産分割協議に加わる必要すらありません。

まず、話し合い。

それでも決まらなければ、家庭裁判所で調停をしてもよいし、裁判官に決めてもらうために審判(しんぱん)というのを申し立てても良いことになっています。

調停からでなく、初めから審判を申し立てても良いことにはなっていますが(離婚とは違うところ)、初めから審判を申し立てても、裁判所のありがたいご指導で調停に戻されることがほとんどです。


そんな、自由に話し合える遺産分割協議ですが、いくつかのルールがあります。

ルール① 相続開始前に遺産分割協議をしても無効。

いちばん有名なのがコレ、ですよね。

亡くなってから話し合え、ってことです。

ただ、生前にみんなで話し合って、それを遺言書に書いてもらっておけばよいので、生前に話し合うことが無意味というわけではありません。

遺産分割協議はできない、ということです。

ルール② 相続人が共有物分割請求をできるか。

ちょっと専門的なので説明を省きますが、これはできません。

ルール③ 亡くなった人が遺言書で一定期間の遺産分割の禁止を定めた場合には、その期間は遺産分割ができない。

5年間までは遺言で遺産分割を禁止できます。

特定の財産にだけこの遺言を残すこともできますので、例えば、子どもらと後妻さんの仲が悪く、自宅を求めて争いそうだなんて場合には、使えそうな規定です。

株をめぐる事業承継の際にも使えそうですね(もっといい手はありそうですが)。

ルール④ いつまでもしなくても、かまわない。

遺産分割協議をいつまでにしなくてはならない、ということはありません。

ただ、山林があるだけで、誰もほしくないので分割協議をやる気が出ない、とかならまだいいですが、相手のある賃借権に関わるものなどは、いつまでも放置するのもいただけません。

また、いつまでの遺産分割協議をしないと、次の世代に持ち越しになってしまいます。

親子3代で全相続人が30人に、なんていう事例もありますので、そうなると相続人を探し出すだけで大変です。 放置もほどほどに。

ルール⑤ 法律上、遺産分割協議を必要としないものも協議できる。

分割債権なんかがそうでしたよね。

具体的に言うと、貸金は分割債権なので、本来は遺産分割協議をしなくても借主が個々の相続人の請求に(相続分に応じて)応じるべきものです。

しかし、返す方としては、債権者が一人の方がありがたいですし、利息だなんだということも非常に扱いが面倒です。

そのため、誰が貸金債権を相続するか、遺産分割協議の中で協議されることが一般です。


こういうルールに従えば、あとは自由です。

自由自由と言ってもそこはお互いの利益がぶつかるところ。

一般的には、法定相続分を目安に、各相続人が、寄与分・特別受益などの各々の思惑を胸に、どれを取ろうか、押し付けようかと、あれこれ遺産分割協議をすることになるでしょう。


次に、基準のお話です。

基準については、二つの基準がでてきます。

一つ目は、いつを基準として、相続財産の範囲を定めるか

先のルール④で「遺産分割協議はいつまでもしなくても、かまわない」とありました。

そのため、いつまでの共有状態ということもあります。

例えば、銀行に預金していると、利息がもらえます。少しばかりの。

また、所有している建物を貸していて、家賃が貰えるなんてことも。

そうして増えたものは、相続財産でしょうか、それとも相続人それぞれの固有の財産でしょうか。

銀行預金などは、判例が出て、全員のハンコがそろうまで払い戻してもらえないことになりましたので、利息も遺産分割の対象とすることになるでしょう。

賃料も、相続財産ではなく相続分に応じて相続人固有の財産になると考えてよいでしょう。

ただ、早い段階で誰が管理をして管理費用を負担して賃料を収受する人を決めて、後でその賃料も含めて、遺産分割協議の中で話し合うことを合意しておくと言うのが争いになりにくそうです。

実際に遺産分割の審判になったときでも、当事者の合意を前提に賃料等を遺産分割の対象としているケースも見られます。

東京高裁昭和63年1月14日
相続開始後遺産分割までの間に相続財産から生ずる家賃は、相続財産そのものではなく、相続財産から生ずる法定果実であり、相続人が複数いるときは相続財産についての持分と同率の持分による共同相続人間の共有財産であるが、相続財産とは別個の共有財産であり、その分割ないし清算は、原則的には民事訴訟手続によるべきものである。但し、相続財産から生ずる家賃が相続財産についての持分と同率の持分による共有財産であり、遺産分割手続において相続財産と同時に分割することによつて、別途民事訴訟手続によるまでもなく簡便に権利の実現が得られるなどの合理性があることを考慮すると、相続財産と一括して分割の対象とする限り、例外的に遺産分割の対象とすることも許容されるものと解すべきである。この場合、当事者の訴権を保障する観点から、相続開始後遺産分割までの間の家賃を遺産分割の対象とするには、当事者間にその旨の合意が存在することが必要であると解するのが相当である。

二つ目は、いつを基準として、相続財産を評価するか。

これも共有状態が長く続くことを想定した問題意識です。

ここでの基準と言うのも実は二つに分かれます。

①具体的相続分を決めるための評価をいつの段階でするか。

これによって、各相続人の具体的な相続分が決まります。

結論から言うと、これは「相続開始時(被相続人が亡くなったとき)」でよいでしょう。

ちなみに特別受益の評価も相続開始時とされています。

②実際に遺産を分割する際の各遺産の評価をいつの段階でするか。

これによって、各相続人へ、どの遺産がどう渡されるかを決める際の個別の遺産の評価額が決まります。

結論を言えば、これは「実際に遺産分割がなされるとき」でよさそうです。

裁判例も、分割時を基準にして評価するものが多いようです。

新潟家裁昭和34年6月3日
ここに分割すべき遺産の評価は分割時を基準とすべきものと解する。 福岡高裁昭和46年8月18日 ことに、不動産等の相続財産は、相続開始後分割までに年月を経過し、その間、遺産を組成する財産のそれぞれの謄落や不均衡を生ずることがあり得るので、その価額の鑑定は分割時(実際には分割時に落着した時点)を基準とすることが、もつとも公平であり、かつ妥当であると解すべきである。

こうした基準が、具体的相続分を決めたり、どの遺産がどう渡されるとそれに沿うかを決める基準となります。

とはいえ、遺産分割は、「一切の事情を考慮してこれをする」というのですから、裁判所は「きっちりは無理よ」と念を押している、というわけです。