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審判の手続と具体例

調停で話が決まらない場合には、裁判官が判決をします。

これを審判(しんぱん)といいます。

裁判と何が違うかという理屈の点はあるのですが、まあ、裁判官がする家事事件における判決のことを審判と言う、と考えてもらえばいいです。

さて、遺産分割の調停のところでは書きませんでしたが、遺産分割にはいくつかの方法があります。

具体的には、
 ①現物分割(げんぶつぶんかつ)
 ②換価分割(かんかぶんかつ)
 ③代償分割(だいしょうぶんかつ)
 ④共有
の4つです。

分割の際は、①→④の順序に優先されるのが実務です。

もちろん、「ここは共有で」と争いのない部分だったりすると、優先順序には縛られませんが、争いがないことに裁判官が必ず拘束されるとは限りません。

一つずつ説明していきましょう。

①現物分割は、まさに分割しちゃいます。

例えば、広い土地があるので、途中で切って二つに分けて(分筆:ぶんぴつ)それぞれ相続させるとか。

②換価分割は、売り払ってお金に換えて分配しちゃうものです。

分けようもないし、誰もほしがらない、他との調整で現金が必要などなど、様々な理由でこの換価分割がなされます。

調停の中でこの部分は売って現金にしましょうという話が出ることもありますが、審判でこれが決まるというのはまれでしょう。

審判で換価分割がなされる場合には、中間処分で任意換価または競売に付されるか、終局審判で競売に付される場合があるようです。

売れた代金は、相続分で分配される場合もあれば、審判の中で配分されることもあるようです。

審判での換価分割は高く売れる見込みも少なく(仮に高く売れそうであれば、相続人が一致して売るでしょうし、誰かがどうしても欲しいのであれば様々な交渉がなされるはずですので)、時間もかかるので、審判の中でこれがなされるのは実務上あまり見られないのではないかと思います。

いずれも私は経験したことがありません。

③代償分割は、ある物を分けずに誰かに与えた場合にその精算として、支払債務を負担させる方法です。

例えば、相続財産が建物1つという場合で共有させるのも好ましくないときなど、この代償分割が行われます。

この手法は、家事事件手続法195条というところに書いてあって、そこには「特別の事情があると認めるとき」に使えると書いてあるので制限的に使われるということでしょう。

④共有は、まさに共有です。

現実に分けることをせず、共有します。

この共有は、遺産分割をした結果の共有ですので、相続財産としての共有状態とは違います。

各人の固有の財産として、共有しているということになります。

こういった方法を組み合わせて、遺産分割の審判がなされます。

また、家庭裁判所は、遺産分割の審判をするのではなく、期間を定めて遺産分割を禁止するという決定をすることもできます。

審判でそういう結論が出されるのですから、それに先立つ調停も、同様にこれらの分割方法を組み合わせて話し合いがなされることになります。


遺産分割の調停のところで例に出たAさんのケースも、Aさんとお母さんのYさんが、自宅を共有(②)していますし、Aさんは相続分以上に自宅の持ち分を取得したことから、弟たちに現金の支払い(④)を行うことになりました。

Aさんのケースでは、弟たちから現金の支払いについて分割払いであることに苦情が出たのでしょう。

AさんとYさんは、弟たちへの支払いを担保するために自宅に抵当権をつけてあげました。

調停ではこのような柔軟な解決も可能ですが(審判でもできるという考え方もあるようですが)、普通は審判でここまでするのは難しいでしょう。


さて、審判の際に、遺産分割の方法として4つの方法があることはわかりました。

調停も審判も、各相続人が利害を対立させながら、すべての相続財産について上の4つの分割方法を頭に入れならが様々な事実を主張・立証していくわけなので、審判は調停の延長線上にあると考えてよいでしょう。

手続的にも、調停が成立せずに不成立になった場合、特別な手続きをしなくても審判に移行します。

裁判官も、調停における各相続人の主張を十分に検討することになるので、その過程の中で自ずと争点や分割の際にどういった事情を考慮すればよいか、というところが明らかとなっていくわけです。

そういう意味で、調停は審判を見据えながらやらなければならず、遺産分割協議も最終的な審判を見据えながら考える必要が出てきます。

審判は家庭裁判所でなされます。

審判も判決の一種ですから、不服があれば即時抗告という異議申し立てが可能で、高等裁判所で再度審議してもらうことができます。

また、調停・審判を通じて保全処分のことは一切解説しませんでしたが、遺産分割協議に先立って、他の共同相続人に不穏な動きがあるというときなどは、保全処分という対抗措置をとれることがあります。

ここまでくると本人では難しいので、ぜひ弁護士に相談してみてください。